「広告表現」と「ドキュメンタリー」の中間を狙いたい
LENS ASSOCIATES(以下 LENS)のフォトグラファー部門SSS(エススリー)。SSSクロストークでは、SSSを統括するカメラマン高坂が、各案件を担当してきたアートディレクターとともにこれまでの撮影について振り返ります。
第一回目の対談相手はアートディレクター三浦。さらに、LENS代表の矢野をゲストに迎えてお届けします。
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というわけで始まりましたけれども。
SSSクロストークね。デザイナー、コピーライター、フォトグラファーと、あらゆるプロフェッショナルがそろっているのがLENSの強みのひとつなんですけど、ここでは、フォトグラファー部門の「SSS」にスポットを当てていろいろと話していきましょうと。
おかげさまでLENSの仕事はクライアントから写真を褒めていただけることも多いんですが、その裏側にはこんな工夫があるんだとか、撮影におけるアートディレクターの役割だとか、SSSならではの取り組みを伝えられるコンテンツになったらいいなと思っています。
よろしくお願いします。
実際の写真を見ながらいろいろ話していけたらと思うんですが、まずはこちら、今もお付き合いのある化学装置の専門メーカーでの撮影です。取引のきっかけとなったWebサイト刷新のお話をいただいたタイミングで工場の写真撮影を提案したんですが、工場の中を何度か見学させていただいたうえで、どんなふうに撮ったらいいだろうかとタカちゃん(高坂)に相談しつつ本番に臨みましたね。
やはりメーカーの本懐は「ものづくり」にあるので、その屋台骨である「工場で働く人たち」を魅力的に見せたいとの思いがありました。だからタカちゃんには、「働いてる人たちの表情や仕草をかっこよく切り取って欲しい」と依頼。また、当時は工場内の汚れが目立っていたので、そのあたりが気にならないように撮影を工夫してほしいとも伝えましたね。タカちゃんは職人を撮るのがうまいので安心感がありましたし、撮影当日はけっこう好きに動いてもらっていたよね。
高坂さんとしては、このときの撮影ではどんなことを気にかけていたんですか。
一般の方はカメラを向けられるのが得意ではない方も多いですし、もちろん仕事の邪魔にならないようにしなければならなかったので、このときの撮影は「人に寄らずに撮る」ことを意識していましたね。危険な作業も多いので工場全体に緊張感が漂っていましたし、知らない人が急に視界に入ってきたらびっくりさせてしまうのではとの不安もあり。本当はもう少し寄って撮りたいという欲求はあったんですけど、なるべく遠くから撮影することを心がけました。
あと、工場をはじめ、現場での撮影で最初に気を遣うのは安全性ですね。工場って危険なものがたくさんあるので、撮影前に全体を見渡して気をつけるべきポイントを確認しています。
タカちゃんが撮る職人さんの写真って、重厚感というかコントラストがいつもかっこいいなって思ってるんだけど、どんなことを意識して撮影してるんですか。
このときの撮影ではストロボをしっかり焚いて、意識的にコントラストを強めています。ストロボを人物だけに当てて、周囲は暗く落とすイメージ。そうすると必然的にメリハリがついて、陰影が浮き立つんです。
参考にしているのはアメリカの撮り方ですね。英語で「Factory(工場)」の写真を検索するとかっこいい写真がたくさん出てくる。文化的な違いもあると思うんですが、日本だと、あんまりきれいじゃない場所でもふわっと「きれいっぽく」見えるように撮ることが多い。頼まれたらやれるけど、個人的にはあんまり好みではないというか(笑)。
これも僕個人の意見だけれども、職人さんの汚れた作業着や手指も含めてその企業のDNAだと思うんですよ。機械や工具を見ても「古びている」ではなく「使い込まれている」と感じるし、そうして積み重ねてきた時間と技術でお金を稼いできたんだから、三浦さんの「汚れが目立たないように」という要望はよくわかるけども、僕としては全然汚くないしっていう思いもあったんですよね。
なので、相談をもらって一番最初に思ったのは、「きれいに撮るのではなくありのままを力強く撮りたい」ということ。だからストロボを強めに当てて、職人さんのかっこよさが浮き立つような撮り方を意識しました。三浦さんが心配していたように、当時の工場の「きれいじゃなさ」はたしかにそうだったんだけど(笑)、別にそれはそれでいいなと思ったので、もちろん背景をぼかしたりはするけれども、ライブ感のある力強さとか、本当に命がけで仕事している雰囲気だとかをしっかり見せたいなと。もちろん用途に応じて適したコントラストは違ってくるので、例えば採用サイトの撮影はもう少し陰影を抑える、といったことはしていますが、このクライアントさんに関しては「力強さ」「かっこよさ」というのは僕の中で一貫したテーマとして持っていますね。
そこがやっぱりLENSの腕の見せ所だと思うんですよね。これまでに社内でもよく言ってきたけど、僕は、ドキュメンタリーと広告表現の中間地点よりちょっとドキュメント寄りのところで着地させたい、と思っていて。広告表現のように、ライトをバンバン入れて被写体にポーズを取らせてしっかり作り込んだ写真も素晴らしいけれど、僕たちがやりたいのはもっと現実味が感じられる表現なんですよね。
ただ、100%ドキュメンタリーだと感想を相手に委ねてしまうから伝えたいメッセージが表現できなくなる可能性もある。だから、アートディレクションの力をプラスして「真実がより伝わるよう、わざとらしくなく作り込む」を意識し続けていかなければと常々思っています。
その着地どころがすごく難しいんだけどね!作り込みすぎると逆に嘘くさいし、何にもしないと何にも伝わらないし。特にこういう製造業の現場の写真だとやっぱりライブだからさ、すごく難しいよね。でもやっぱり高坂さんの中にテーマがあるからさ、あとから見返してもかっこいいなあと思えるもんね。
三浦さんは広告出身だからこそ、気を抜くとつい「作り込みすぎちゃう」から気をつけてほしい。
ついねー(笑)
でもやっぱり三浦さんのようにクライアントをしっかり理解してくれているアートディレクターがいるのはカメラマンの立場からすると心強いですよ。この撮影のときも、大きな機械を撮影したときに僕としては「かっこいい角度を見つけられたな」と思って撮影していたんですが、三浦さんが「この機械の特筆すべき点はこのあたりだから、そこがしっかりわかるよう抑えてほしい」と言われてさすがだなって思いましたもん。
カメラマンは自然と「この機械が美しく見える場所」を探してしまうけれど、つくり手からは「本当はこっちを見せたいんだよ!」っていうのがあったりするんで。どれだけかっこいい写真が撮れたところでクライアントさんの役に立てなければ意味がないので、その点は、案件の責任者でもあるアートディレクターがしっかり見てくれているLENSの強みだと思いますね。
あと、タカちゃんはやっぱり撮影が早いんで、すごく助かる。僕はめちゃめちゃ細かな指示を出すタイプではないので、タカちゃんの経験値でもって「なんかこんな感じ」っていうのが大体わかってもらえるのはありがたいですね。
自分の撮影のスタイルとして、僕は常に最短距離を求めるタイプ、というのはあるかもしれないですね。
素晴らしいことではあるんだけど、それは互いの弱さでもあると思うな。三浦さんは性格が優しすぎるところがちょっと弱点なんで、仕事が早くて助かるなと思う一方で「本当だったらもっとこう撮りたかったな」っていう部分が仮に少しでも残ってるんだとしたらやっぱりそれはしっかり言っていくようにしないといけないし。高坂さんも、常に最短コースじゃなくて遠回りしたほうがいいケースもあるかもしれないし。「よりよい写真を撮って最適解に導く」ことがゴールだからさ、お互いにディスカッションして、もっとレベルを高めていってほしいなと、会社の代表として願っています!
今後、SSSクロストークでそのあたりの話ももっと掘り下げていきましょう(笑)