工場で働くひとの「優しさ」を引き出すライティング
LENS ASSOCIATESのフォトグラファー部門SSS(エススリー)。本コンテンツ「クロストーク」では、SSSを統括するカメラマン高坂が、各案件を担当してきたアートディレクターとともにこれまでの撮影について振り返ります。今回の対談相手は、アートディレクターの松井です。
Member
-
AD:松井 香澄
-
SSS:高坂 浩司
今回振り返るのは、工業製品メーカーの撮影です
工場の場合だと普段は力強さを表現することが多いのですが、今回は少し違う要望をいただいたのが印象的でした。
打ち合わせやロケハン時に感じたクライアントの優しい印象、お客さまに寄り添ったイメージを目指すことになりました。完成した写真を見ると、工場写真なのに優しい雰囲気があってまさにイメージ通り!この撮影で気をつけていたことってなんですか?
まずは安全性を第一に考えます。最初に工場全体を見渡して気をつけるべきポイントを確認し、それから、作業の自然な流れを妨げないよう注意を払いながら撮影位置を決めていきました。
安全性を第一に考えてくださっているのに危険な指示を出してすみません。…プレス機に乗れとか(笑)
あれは危なかった!「プレス機の上に乗って撮ったらどうですか」って平気で言うもんなあ、松井さん。戦場カメラマンじゃないんだから(笑)。
あと、気をつけている事としてもう一つ。写真全般に言えることですが、撮影において大切なのはやはり「光」ですね。工場など蛍光灯が多い場所で単にストロボを焚いて撮影しても、のっぺりとした仕上がりになってしまいます。現場に入ったらまずは自然光の入り方を観察し、それを活かす方法を考える。必要に応じてストロボも使いますが、今回の場合、ガツンと当てるのではなく、光と影のバランスを考えながら柔らかい表現を心がけました。
また、こういった撮影の前には必ず、担当の方に「この作業は普段からやっている作業ですか?」「同業者が見てもおかしくないですか?」といった確認をさせていただいています。撮影用の演出が過度になってしまうことで業界の人が違和感を感じてしまうような仕上がりは避けたいので。
実際の作業を撮影させていただいたのですが、みなさん協力的で助かりました。
その点はすごく助かりましたね。一方で、撮影のために業務が止まってしまうのは本末転倒なので、作業の邪魔にならないよう気を配りながら撮影を進めました。
クライアントがいる仕事はすべてそうですが、担当者の方が見せたいポイントと、カメラマンとして魅力的に写せるポイントは、必ずしも一致しないことがあります。でも、単に見栄えだけを追求するのではなく、その会社のDNAというか、積み重ねてきた時間と技術が伝わるような写真を撮るためには、現場の方々との対話を大切だと感じています。
今回は現場での撮影を1日で撮りきるというタイトなスケジュールでしたが、そういう状況ではどのように撮影をプランニングされているんですか?
基本的には、どんな撮影でも3パターンの写真を押さえるようにしています。まず引きの絵を撮って全体感を押さえ、次に人物が入った表情がわかるようなカット、そして最後に道具や作業の細部といったイメージショット。撮影プランとしては、それを逆算している感じですね。例えば20分の持ち時間があれば、10分、5分、5分というように時間配分を考えながら撮影します。
スピーディーさが求められる現場では、引きの写真を撮影しているときから、次の寄りの撮影のイメージも考えています。同じアングルで単に寄るだけでは面白くないので、少し位置を変えたり、アングルを変えたりする。そうすると例えば、「このパイプを動かしてもらえませんか」といった具体的なお願いもスムーズにできます。
今回一番難しかったのは、天井がアーチ状になっている場所での写真でしたよね。
そうですね。天井がアーチ状になっているため光の反射がコントロールしづらく、色味をつくるのに苦労しました。また、「顔と手元の両方がきちんと収まるように」との希望があったものの、無理に詰め込むと不自然になってしまう。事前にイメージ写真を共有していただいたのですが、理想と現実のギャップにどう対処するかが課題でした。
と言いつつも最終的には素晴らしい写真に仕上げてくれるのでさすがです。現場ではいつも高坂さんの臨機応変さに助けられていますし、「ここは見せ場にしたい」というポイントを必ず押さえていただけるのもありがたいです。
それは松井さんが現場でのコミュニケーションをしっかり取ってくださっているおかげですよ。限られた時間の中でもスムーズに撮影が進められるのは、そういった事前準備があってこそだと思います。
今回、最終的な写真のレタッチはデザイナーの合田さんが担当してくれたんですが、実は嫌だったんじゃないか…と心配しています(笑)
いやぜんぜん!カメラマンの中には自分の写真をレタッチされることを嫌がる人も少なくないと思いますが、僕はそうでもなくて。というのもフィニッシュワークは制作物全体のトーンに合わせることが重要なので、最終的にデザイナーやアートディレクターの判断で触ってもらっていいと思っています。それに、LENSのメンバーのことは全面的に信用していますし!
逆にプレッシャー(笑)。と言っても現場でしっかり仕上げてもらっていたので本当に色味を少し調整する程度だったんですけどね。おかげで、サイトの雰囲気をしっかり統一できたので助かりました。ちなみに、この案件の難易度は5段階で言うとどのくらいですか?
このプロジェクトは2か3くらいですね。工場という環境は、実は撮影のバリエーションがつくりやすい場所なんです。
意外!そうなんですね。では高坂さんにとって難易度5というのは、どんな案件でしょう?
採用系の撮影で言うなら、マンションのワンルームを事務所にしているような場合ですね。数人の社員がデスクワークをしているだけ、という空間では制約が多く、かつ見せ方の選択肢が極端に少ない。そういう案件は難易度5です(笑)。
なるほど。技術的な難易度というよりも、いい写真が撮れる可能性が限られていることのほうが大変。
そうなんです。逆に難易度1は、例えば決まったライティングでパシャパシャ撮っていけるような、証明写真的な撮影ですね。一方で、パッケージや商品の撮影は一見簡単そうに見えて実は奥が深い。光の反射や切り抜き用の配慮など、気をつけるべきポイントが多いので。
どんなに環境が厳しくても、何とかするのが僕たちの仕事。でも、その「何とかする」の難しさのレベルには確実に差があります。
クライアントからは、ウェブサイトを公開をしてから、サイトを見て応募してくださる方が増えたとうかがいました。ありがとうございます。
それはなにより!これからもポジティブなフィードバックはどんどん教えてください(笑)