仕事の「リアリティ」と写真の「かっこよさ」を両立するために 

Vol.03

LENS ASSOCIATES(以下 LENS)のフォトグラファー部門SSS(エススリー)。本コンテンツ「クロストーク」では、SSSを統括するカメラマン高坂が、各案件を担当してきたアートディレクターとともにこれまでの撮影について振り返ります。今回の対談相手は、アートディレクターの三浦です。

Member

  • AD:三浦 保高
  • SSS:高坂 浩司

クロストーク - CROSS TALK

三浦

今回取り上げるのは、大手スーパーマーケットチェーンの採用ツールです。撮影は、関東エリアの店舗でおこなわれました。

高坂

タイミングが合わずどうしてもロケハンが叶わなかったのですが、そのぶん事前にいろいろとシミュレーションをしてから臨みました。めちゃくちゃ人気があるスーパーだと聞いていたので余裕を持ってオープン2時間前の朝7時に現場に入ったものの、すでにお客さんが並んでいたので驚きましたね。最初は人がいない状態で店内を撮るつもりだったんだけど、開店してすぐにお客さんがどんどん入ってきちゃったので、その状態で撮影するしかなくなってしまった。

三浦

ロケハンができなかったため、現場に着いてから、その日どこで撮影するかを決めながら機材の準備を進める必要がありました。かなり急いで準備を進めたものの、撮影しようとしたときには既に開店時間になっていて、開店と同時に一気にお客さんが入ってきちゃったんだよね。

高坂

スタート早々から焦りました(笑)。売り場全体を押さえる画角に関しては、最初はスローシャッターで4秒5秒くらい露光すれば人が消えるかなって思ったんだけど、なかなかうまくいかなくて苦労しました。というのも、スーパーって商品を選んだり値段を確認したりするから、同じ場所に止まったままのお客さんが多くて。

三浦

そうした状況下でも高坂さんはめげずにがんばってくれて、何枚も撮影して合成して仕上げてくれました。

高坂

結局6枚の写真を合成して、さらにレタッチで人を消しました。完成までにはかなり時間がかかりましたけど、結果的にいい仕上がりになったんじゃないでしょうか(笑)

  • 6枚の写真を合成。買い物客や床の案内テープを消し、レタッチを加えて仕上げた。

  • 6枚の写真を合成。買い物客や床の案内テープを消し、レタッチを加えて仕上げた。

  • 6枚の写真を合成。買い物客や床の案内テープを消し、レタッチを加えて仕上げた。

三浦

ほんとありがとうございます。そもそもこの日の撮影はかなりタイトなスケジュールで、お昼休憩を取る暇もないくらいの忙しさだったのを覚えています。店内撮影だけではなくて、スタッフの撮影も、お弁当の撮影も1日で終わらせないといけなかった。

高坂

この日は現場で普段どおり働いてるスタッフのみなさんにご協力いただいたので、スピード感も求められましたね。撮影に時間がかかってしまうと、仕事が滞ってしまうので。

三浦

背景に映る商品の陳列や、POPの扱いにも悩みました。あくまでも採用ツールなのでただのスナップではよくないけれど、かといって作り込みすぎてもダメ。

高坂

矢野さんがよく言う「ドキュメンタリーと広告の間」ですね。画面全体に目を配るけど、あまりに引きすぎるとすごく嘘くさくなるし。かといって、ドキュメンタリーのように生々しいものが映ってたら、それはそれでよくないし。バランスの取り方には気をつかいました。

三浦

バイヤーさんの撮影では最初2人で撮影する予定だったものの、実際に撮影してみて、やっぱり1人のほうがいいんじゃないか、といった判断も現場でおこないました。バックヤードでの撮影だったからどうしても背景が雑多で、いい画角を見つけるのに苦労しました。

高坂

だきれいに撮ればいいというわけではなく、採用ツールだからこそ「その職業らしさ」が感じられる場所で撮影するのは必須条件でした。また、ほとんどのスタッフには表情が見えるようマスクを外して撮影させてもらったんですが、食肉を扱う仕事に関しては、リアリティを重視してマスク着用のまま撮影するかどうか悩みましたね。

  • 販促ツールに使用する写真は、実際に働いているシーンを撮影した。

  • 販促ツールに使用する写真は、実際に働いているシーンを撮影した。

  • 販促ツールに使用する写真は、実際に働いているシーンを撮影した。

  • 販促ツールに使用する写真は、実際に働いているシーンを撮影した。

三浦

結果的にリアリティを重視してマスクのまま撮影しましたが、あの判断は正しかったと思います。目の表情だけでも十分伝わる写真になりましたし。完成したツールを見て、「作り込まれた感じじゃなくて、ちょうどいいリアリティとかっこよさがある」と評価されたのは僕もうれしかったですね。

あと、印象に残ってるのは弁当の撮影です。あれ、めちゃくちゃ短時間で撮りきってくれましたよね。どの弁当も本当にうまそうに撮れてて、改めて高坂さんすごいなあって。

高坂

確かに時間はタイトだったけど、照明だけ決まったらあとは商品を変えていくだけなんでね。大げさに言ったら、それぞれの商品の撮影にかかった時間は30秒くらいじゃないかな。料理写真についてはどうやったらおいしく撮れるかというコツが長年の経験でわかっているから、自分のなかではそこまで大変だった印象はないかもしれないです。

  • 表紙に弁当の写真を全面に使った販促ツール。PP加工でプラスチックのツヤを表現。

三浦

なんだかそれってピカソの話に似てますよね。ピカソがその場でサラサラっと描いたスケッチを見た人からいくらで譲ってくれるかたずねられたときに「100万ドル」って答えたら「たった30秒で描いた絵なのに高すぎる」と言われて「30秒ではなく30年分の経験の対価だ」って答えた話。

高坂

ピカソに例えられるのはさすがに恐縮ですが(笑)、ありがとうございます。

三浦

ともかく、高坂さんの「妥協しない姿勢」にはいつも感心しています。どんなにタイトなスケジュールでも、よりよいものを作ろうっていう気持ちが伝わってくるので、こちらもちゃんとしないとなと思わされますね。

高坂

いやいや、僕のほうこそ三浦さんのアイデアの切り口とか、クライアントとのコミュニケーションの取り方とか、本当に勉強になっています。このプロジェクトでおもしろかったのは、写真を撮るだけではなくて、プロジェクト全体を見られたこと。外注カメラマンだとただ写真を撮って納品するだけになっちゃうけど、LENSの一員になってからは全体の流れを知ったうえで本番に望めるので工夫のしがいがありますね。

三浦

たしかに、違う立場のクリエーターが刺激し合えるのはLENSのいい面だと思うなあ。

高坂

これからも一緒にがんばっていきましょう!